Care: Troubleshooting 3

Care: Troubleshooting 3

トラブルシューティング3:使い古されて色が剥げてきた!

トラブルシューティング3使い古されて
色が剥げてきた!

2011年発行 「日本の革 4号」より

自然な風合いに合わせて
ムラを気にせず染める

しっかり使いこまれ、取っ手や底の部分の革が剥げている女性用バッグ。もともと自然なムラ感のある風合いの染料によって仕上げたバッグであったため、使い込まれてもヤレ具合は目立ちにくいが、やはりこうした剥げや傷は目についてしまう。
そこで今回は染料を使って染め直すことに。染めるといっても染料に浸けるような本格的なものではなく、布に付けて塗るように染めていく手軽なもの。もともとバッグが自然な風合いなだけに、染め具合に多少ムラがあっても気にしなくていい。
染料が乾いたら、バインダーで染料を定着させて、さらに長年の使用で抜けた油分を補うために乳化性クリームを塗ってツヤを出して仕上げる。

かなり使いこまれた革とキャンバスを組み合わせた女性用バッグ。常に手が触れるハンドル周辺や、バッグを置いたときに擦れる底部分の色が剥げ、無数の傷も付いている。

Step 1.

まずはバッグの表面に付いているホコリを落とす。基本的には柔らかい布で空拭きのみ。染め始めは、染料の色が合うかどうかを目立たない場所に入れてようすを見ること。

Step 2.

色がムラになっている縫い目部分の当て革から染料を入れていく。染め布に染料を少しずつ付けながら押しこむように染料を入れていく。特に色の薄い部分は念入りに。

Step 3.

擦れて表面が傷んでいる底面の角の部分。染料を乗せるとすぐに染み込んでいくので、たっぷりと染料を入れていく。染料が乾かないうちは仕上がりより濃く見える。

Step 4.

縫い目や革の端など、細かい部分にもしっかり染め布を当てて染料を入れていく。たっぷりと染料を布に付けて、叩くようにしていくとこうした場所でもしっかりと染まる。

Step 5.

広い面積の部分を染める時には、指の腹を使ってやさしく塗りこんでいく。今回は元のムラ感を生かしながら染めていくので、全体の色調を見ながら均等に染めていく。

Step 6.

全体が染まったら染料が乾くのを待ち、バインダーで染料を安定させる。その後、乳化クリームで革に栄養分を与え、きれいな布で表面を磨き上げることでツヤを出していく。

Step 7.

今回のバッグはショルダーベルトも革でできている。やはりベルトも擦れて傷んでいるので染料で色を補うこと。傷みが激しいのでたっぷりと染料を入れてゆく。

Step 8. 完成!

擦れて色が剥げたり傷があったりした部分は色が明るく目立っていたが、染料が中まで入ることにより、染料で少し染まった周囲と馴染んで、こうした剥げや傷が目立たなくなった。

色剥げに効くケアグッズ

1.退色した色を補う皮革用液体水性染料。今回はカバンの色に合わせてやや濃いめの茶色を選んだ。セイワローパスバチックマロン(¥315)。
2.革に染み込んだ汚れ、油分を落とす乳化性の汚れ落とし。The Shoe of lifeモイスチャークリーム(¥1,260)。
3.染料を定着させるための仕上げ用下
塗り剤。セイワバインダー(¥262)。
4.染料を付けるための布。柔らかいタオル、ネルなどの素材がベター

中指と薬指であれば力が入らなくて◎

染料を入れるタオルは、勝川さんの場合、中指と薬指に巻きつけるようにして持つ。人差し指を使う人も多いが、その場合、力が入りすぎてしまうという。薬指であれば力が入りづらいので、繊細な作業ができる。磨きあげのときにもこの2本の指を使うという。