Creative: Sakamoto Corporation
坂本商店:歴史を受け継ぐ伝統製法のレザーが進化 次の100年を見据えた アート性と抗ウイルス性機能
2022年取材
日本古来の伝統技法である、鞣しの技術と漆塗りの技術を融合させた姫路黒桟革。小さな宝石を革に散りばめたような見た目から「革の黒ダイヤ」とも呼ばれる。摩擦に強く、剣道の胴胸などの武道具に使われ、戦国時代には、 大将クラスの甲冑に使われていたそうだ。
そんな伝統製法のレザーが、これまでとは異なるジャンルで注目された。
「日本の美意識が凝縮したような、上品な煌めきがオリエンタルなムードを醸し出します。
以前は漆の持ち味を活かした黒のみの展開でした。芸術ともいえる品質の皮革をファッション素材として提案すべく、カラーバリエーションを強化。そのときどきのトレンドカラーも積極的に挑戦しています。漆×レザー(下地)の相性によってマッチングが難しいのですが、これまでにない表情の発見、化学変化があり、取引先からもリクエストをいただいたりするのがうれしいですね」と坂本商店代表 坂本弘さん。
剣道を愛好する人の減少によるマーケットの縮小に危機感を抱き、ファッション業界へアピール。唯一無二のストーリーと付加価値性の高さが認められ、人気を集める。海外展示会などにも積極的に出展。「Premiere Vision Paris」PVアワード レザー部門ハンドル賞をはじめ、コンテスト等で受賞を重ね、快進撃が続く。
2014年「香港APLFアワードMM&T展(素材展)」にて日本人初のベストニューレザー部門グランプリを受賞した姫路黒桟革「極」。審査員に「サムライ以来の伝統的な革を鞄や靴などの現代ファッションの域に高めた」と高く評された。
日本エコレザーにも認定され、環境への意識が高まる時代に寄り添うレザーとしての側面ももつ。黒桟革に用いる漆の効能(漆の抗菌・抗ウイルス効果)にも注目したい。研究機関に依頼し99.9%ウイルス死滅したとの検査結果があったそう。ウィズコロナ・アフターコロナ時代が求めるレザーの提案ともなりそうだ。
同社4代目となる予定の悠さんも入社。BtoB、BtoCを並行して展開し、SNS活用を強化。新作の発表、創作についての想いなどを情報発信し続けた結果、投稿に対して多くの反応があり、インスタグラムを通じて海外からの発注が続々。アメリカからオファー、ベルギーをはじめさまざまなオファーが届いた。フランスの馬主サロンから馬具用の発注もあった。
このほか、世界に挑戦できる国産最高級の腕時計、セイコーの上位モデル「グランドセイコー」に採用され、世界販売。漆と革、光と影が織りなす美しさが腕時計ファンの心をとらえる。
ある宿泊施設では、対面キッチンの壁紙やアメニティ入れ、ゴミ箱、メニューカバーなどに採用された。2019年には、黒桟革を展示したギャラリースペースをオープン。2023年には創業100周年を迎える。次の100年を見据え、剣道からファッション、宝飾品、インテリア・・・とジャンルの垣根を超えた「黒桟革」の可能性はさらに広がっていきそうだ。