Creative: Elever Kasei
エルヴェ化成株式会社:歴史や技術を受け継ぎアップデート 新しいジャパンレザーが 皮革産地 たつの市のものづくりを牽引
2022年取材
近年、国内の原皮で鞣した牛革が注目されている。メイドインジャパン、日本製革製品への関心の高さはもちろん、「SDGs」の観点から、ものづくりにかかわる物流、移動が少ないことで、エネルギーコストや二酸化炭素排出量を軽減。国内でものづくりが完結することで社会情勢の変化に対応しやすいことも時代のニーズにマッチする。
兵庫県たつの市のタンナー エルヴェ化成株式会社では、さまざまな種類の牛革素材を製造。原皮は古くから国内のホルスタインや黒毛和牛(一毛)を中心に扱う。
これらの牛の種類は、肌目の質 皮の繊維 地あぶらなどの個体差、特徴が大きく異なるため、それぞれに適した革素材に加工。その采配は、目利きのタンナーならでは。特に黒毛和牛は、霜降りと呼ばれる脂肪交雑(サシ)が特長。皮の脱脂作業には手間がかかり、設備への負担も重いが、革づくりにひたむきな情熱を注ぎ、食肉の副産物、さずかりものを無駄にすることなく利活用している。
新作レザー「ルミナス」は黒毛和牛の原皮を使用。天然のシュリンクが一面に出るように鞣しに手を加え、シボの凸の部分にゴールドの色づけをプラス。江戸時代の絵師が描いた日本画のような雅な雰囲気に仕上げた。和の美意識、伝統美からイメージを膨らませ、静寂のなかに佇む美を表現。上品な煌めきに目を奪われる。そのクオリティーが認められ、兵庫県皮革産業協同組合連合会主催「ひょうごニューレザーコンテスト2022」では、経済産業省製造産業局長賞(グランプリ)を獲得した。
同社代表取締役社長 石本 晋也さんは2017年にNPO法人TATSUNO LEATHER 理事長に就任。皮革の聖地、たつの市に受け継がれてきた皮革製造の技術、文化の継承や、地域ブランド「タツノレザー」の確立に関する事業を行い、皮革産業並びに地域の活性化に寄与すべく尽力している。
2022年9月に開催された「ニューエナジー」(展示会、マーケット、メディアを内包した新時代の複合型イベント)にブース出展。ハンディキャップのある方たちとのコラボレーションにより、アート作品のようなレザーをお披露目。これまでになかったポップで大胆な表現が注目を集めた。地域ブランドのPRとともに社会貢献へとつながり、ジャパンレザーの多様性、新境地を切り拓く。