Products: PORTER
ポーター:日本が世界に誇る鞄ブランド。その歴史の始まりは革鞄だった
吉田カバンの創業者である吉田吉蔵氏は、上野の老舗鞄工房で修行を積んだ鞄職人だ。関東大震災時、17歳だった吉蔵氏は紐の両端に家財を結びつけて肩からかけることにより、多くの荷物を運び出している。この経験は吉蔵氏に「カバンとは第一に荷物を運ぶ道具でなければならない」と考えさせ、1935年に吉田鞄製作所を設立した後もこの経験に基づく理念を忘れずに、”使うほどに馴染み、永く愛用してもらえる鞄”づくりを目指した。吉田カバンが世に知られるきっかけとなったモデルであり、1953年に爆発的にヒットした「エレガントバッグ」ももちろん革製だ。
現在のポーターのラインナップで、革製品が占める割合は2〜3割程度。現存するシリーズで最も歴史が古く、野球のグローブをイメージした肉厚で柔らかな革を使った「バロン」は、今も変わらず人気を集めている。ただ、昨今のライフスタイルには、ナイロンなどの軽くて扱いやすい素材が好まれる傾向にある。それでも絶えず革製品を発表しているのは、日本のモノづくりにおける技術継承を大切に考えているからだ。
吉田カバンは創業以来、『一針入魂』の精神のもと職人とともに歩んできた。生産拠点を海外に切り替えるメーカーが多い中、吉田カバンがメイド・イン・ジャパンにこだわり続けているのは、信頼のおける職人たちとの関係を大切にしているからだ。それを証明するエピソードが残されている。1994年にファッション業界の功労者に贈られるミモザ賞を受賞したときのこと。当初は吉蔵氏本人に授与される予定だったが、二人三脚でしてきた仕事だから職人たちと一緒に受賞したいと頼んだ結果、受賞者欄には「吉田吉蔵氏並びに吉田カバンの職人衆殿」と書かれたのだ。このことからも職人たちをいかに大切にしているかわかるだろう。
また、10年以上前から製作部という部署を設け、鞄づくりに興味がある、もしくは鞄職人の道を希望する人材を職人のもとに修行に出すこともしている。数年に及ぶ職人修行を終えた者は修行先から戻り、現在は職人として社内でサンプル製作などをおこなっている。これも技術継承の一貫であり、『一針入魂』の原点を守るための取り組みでもあるのだ。
ブランド発表から60周年を迎えるポーターは、これまで数々の人気シリーズを生み出してきた。ラインナップの豊富さは鞄ブランド随一といっても過言ではなく、現在も200以上のシリーズを展開している。また、「バロン」をはじめとする数十年も続くロングセラーが多いのも一つの特徴だ。いつの時代も色褪せないデザインだからといったらそれまでだが、ロングセラーを支えているのは間違いなく鞄づくりに関わっている職人たち。
一針一針を丁寧に縫い合わせていく作業のように、素材選びからデザイン、縫製に至るすべての工程に手を抜かないという『一針入魂』の精神を貫いているからこそクオリティが守られている。そして職人たちと密にコミュニケーションがとれる、メイド・イン・ジャパンにこだわっているからこそつくり続けられる。それがポーターの真の魅力であり、世界中の人々を魅了し続けている理由なのかもしれない。
軽く柔らかな手触りの上質なカーフを採用した「ポーター アルーフ」は、10年以上続くポーターのロングセラーシリーズのひとつ。なかでもデイパックは人気が高く、キメの細かいカーフの風合いが引き立つシンプルなデザインが特徴だ。ヘリ巻きに用いたナイロンテープとのコントラストも印象的で、オールレザー製ながらもどこかカジュアルな印象。ファスナーの引手の位置を固定できるセミオートマチックスライダー、通気性の高いメッシュ生地を使った背面など、使い心地を向上させる優れた機能も備えているのもポーターならでは。どんなスタイリングとも合わせやすく、それでいて格上げ効果も期待できるので、ワードローブにあると確実に重宝するはずだ。