Knowledge: Mens' Shoes
メンズシューズ:紳士靴には 革の特性が如実に表れる
2009年発行 「日本の革 2号」より
紳士靴と一口に言っても、その世界は深い。何百年かけて完成させたデザインを守りつつも時代性を無視することはできないし、何より歩く道具としての機能性を満たしていなければならないのだ。また、靴は実に多くのパーツから成り立っており、工程数も多い。グッドイヤーウエルト製法にいたっては200に近い工程を要するという。そのイロハを知ることは良い靴に出会うためには必要なことだ。
ほんの少し前まで、日本ではアッパーに顔 料をたっぷり吹き付けるなど、均一に仕上げ ることが美徳とされていた。が、ここ数年で 価値の転換が起きた。付加価値のあるモノ作 りを志向する中で、手仕事を駆使した、つま りビスポーク工房でお馴染みだった仕様が再 評価されているのだ。考えてみれば天然皮革 は手をかけただけ、たとえようのない味わい が生まれる。そもそもが工業製品ではくくり きれない魅力をもったアイテムなのだ。その 揺り戻しは決して悪いことではない。 特徴的な仕様については下で解説するが、 右で紹介した足なりのフォルムもまた、改め て見直されたひとつだ。効率を考えれば左右 対称のほうがいいに決まっている。