Creative: Moriyoshi × Kawazenshoten

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モリヨシ×川善商店:挑戦こそ モノづくりの原点なり。

モリヨシ×川善商店挑戦こそ
モノづくりの原点なり。

革問屋とタンナー、どちらも革のスペシャリストだ。
彼らにとって製品とは革そのもの。そしてそこには知られざる挑戦がある。
家具用革をめぐって、タッグを組む、2社にお話しを伺った。

2012年発行 「日本の革 5号」より

オンリーワン。革を表現する上でよく聞く言葉だ。ひとりとして同じ人間はいないように、革の原皮となる動物たちもまた、それぞれが違う。それが個性だ。ときにそれは味わいと呼ばれ好まれ、ときにそれは、「不均等」であることからモノづくりの現場では敬遠されることもある。それが「天然」素材であるということの宿命。
ニッポンのモノづくりが賞賛される理由のひとつに、実直な作り手の姿勢がある。100個つくれば100個とも、1000個つくっても1000個とも、基準品質を頑なに守る。限られた時間の中でのブレのない手仕事。それが作家ではない、職人としての誇りだ。だからこそ、「天然」である革を扱う職人には、卓越した技術と経験が必要となる。
「家具用革ほど、難しい革はありません」と語るのは名古屋にある皮革卸業、川善商店の川北芳弘さん。華やかな広告業界から一転、家業である皮革の世界へ飛び込んで5年。業界から見ればまだまだ若手だ。「非常に勉強熱心で、ボクらの方が教えてもらうこともあるぐらい」とフォローするのは兵庫県たつの市のタンナー、モリヨシの森脇さん。「タンナー、薬品メーカー、試験場と、彼は疑問に思えばどんどん現場に出て知識を得ているんだよね。吸収力が違うよ。それに別の業界からの視点も我々にとってみたらものすく新鮮なんだ」。そんな彼が気になったのが家具用の革だった。「特殊なジャンルなんです。とにかく高い堅牢性が求められる。さらには、面も大きい。ソファなどは一枚でやっと一面。小さなパーツであれば、キズなどを避けて裁断していくこともできますが、家具はそうはいきません」。現在、日本で主流となっている家具用革は、銀面(革の表)がついていないのが一般的。キズを隠して基準品質を守れるからだ。上から塗膜を厚くはり、型をおこしていく。さらに日焼けや色落ちしないようにすると、塗膜はどんどん厚くなっていく。革貼りと思って見ているそのソファの表情、実は、本来の革らしい「天然」の表情ではない、ということが言えなくもない。「もちろん、スペック的に見ればその革も非常に優れたものです。ただ、ハンドバッグや衣料などではほとんど使われないタイプの革を、お客さんが天然の本革とはこういうものなんだと思ってしまっているのも事実です。さらには、つくり手で ある家具デザイナーでさえ、銀付革のことを知らないということも」。

熟練の職人と若手の想像力が革の新しい可能性を生み出す、モリヨシの工場。

チャンスだと感じた。やっていないことをやればいい。しかし、これは簡単なことでない。一定の品質を保つために通常の家具用革よりも塗膜による均一化をはからなければならず、しかし同時に表情をいかすため、いかに塗膜を薄くできるかが勝負。「化粧でいうところの薄化粧やね。家具用革だったら、普通は機械で塗っていくんだけど、川善さんがつくりたかったのは、薄くて柔らかい革。しかも銀付。これだと革が機械に巻き込まれやすく難しい。さらに化粧は薄くときたら、手塗りしかないね」。完全防水のノンクロム革、さらにはヌメ革と、最新技術の研究開発に注力し続けているモリヨシ。そんなタンナーに、時代を逆行するかのリクエストが入る。「薄く、さらに機械よりもしっかりと革に塗りこむ。アナログだけど、薄くて丈夫という要求を実現してくれる唯一の方法。そんなオーダーに答えてくれたのは、モリヨシさん含めて数社しかありませんでした」。そうして生まれたのが『SENSUOUS』という革。

手塗り作業。けして効率的ではないが、機械では表現できない革の表情が生まれる。

日本有数家具メーカー、カリモク。「とにかく品質管理はものすごく厳しい」と川北さん、森脇さんが口を揃えて言う。「革に対する知識をしっかりと持っている珍しい家具メーカー。商材の中心は木材であるがゆえ、同じ天然素材を扱うプロとしてやりがいがあります」。そんな天然素材を知る家具メーカーが長年「銀付」「手塗り」の家具用革を採用している。革の良さとは何か。その答えを追い求める革人たちの挑戦は、いま始まったばかりだ。

モリヨシには色校正室がある。メーカー、問屋、タナリーで統一した環境が必要なのではと川北さんは提言する。